「相見積もりを取ったけど、何を比較すればいいか分からない」——価格の高い安いだけ見ていませんか?
実は、見積もりで本当に比較すべきは「人工(にんく)」です。人工とは「何人の職人が何日かけて作業するか」を表す単位。この数字を工程ごとに比較すれば、業者の品質に対する姿勢が一目で分かります。
「人工」とは何か?見積もり比較の新常識
人工(にんく)とは、作業量を表す建設業界の単位です。「1人工」は「職人1人が1日作業する量」を意味します。
例えば「下地処理:2人工」と書いてあれば、「職人1人で2日」または「職人2人で1日」の作業時間が確保されているということです。
なぜ人工が重要なのか?塗装工事の品質は「どれだけ時間をかけられるか」で決まるからです。同じ塗料を使っても、時間をかけた丁寧な施工と、急いで終わらせた施工では、仕上がりも耐久年数も大きく変わります。
見積書を「人工」で比較する方法
見積もりを取る際、以下の質問をしてください。
「各工程に何人工かけますか?」
この質問に具体的に答えられる業者は、工程管理がしっかりしています。逆に「全部で○日です」としか答えられない業者は、工程ごとの時間配分を考えていない可能性があります。
比較表を作るなら、以下の工程ごとに人工を書き出してみてください。
- 足場設置:○人工
- 高圧洗浄:○人工
- 下地処理(ケレン・補修):○人工
- コーキング打ち替え:○人工
- 下塗り:○人工
- 中塗り:○人工
- 上塗り:○人工
- 付帯部塗装:○人工
下地処理の「人工」が品質を決める
塗装工事で最も品質差が出やすいのが「下地処理」です。ここは業界で「グレーゾーン」と呼ばれるほど、業者によって手間のかけ方が違います。
なぜグレーゾーンなのか?下地処理は塗装すると見えなくなるからです。手を抜いても、完成直後は分かりません。数年後に剥がれや膨れが出て初めて「下地処理が不十分だった」と分かるのです。
だからこそ、下地処理に何人工かけるかを確認してください。30坪程度の住宅なら、下地処理だけで最低2〜3人工は必要です。これが1人工以下なら、かなり簡略化されていると考えてよいでしょう。
人工が少ない見積もりの正体
見積もり金額が安い場合、その理由は大きく2つです。
- 塗料のグレードを下げている
- 人工(作業時間)を削っている
塗料のグレードは見積書で確認できますが、人工の削減は見落としがちです。特に削られやすいのは以下の部分です。
- 下地処理の時間(ケレン作業の省略)
- 乾燥時間(1日1工程を守らない)
- 細部の塗装(軒裏、雨樋裏など見えにくい部分)
「安い見積もり」の裏側には、必ず「何かを削っている」理由があります。人工で比較すれば、何が削られているかが見えてきます。
人工を確保できる会社の特徴
十分な人工を確保するには、会社として余裕が必要です。以下の特徴がある会社は、品質のための時間を確保しやすい傾向があります。
- 自社職人で施工(下請けに出さない)
- 足場を自社保有(レンタル費用を気にせず工期調整できる)
- 地域密着(移動時間が少なく、現場に時間をかけられる)
- 自社でホームページ集客(ポータルサイトへの手数料がない)
これらの条件を満たす会社は、中間マージンや余計なコストがかからない分、職人の作業時間に還元できます。
相見積もりの正しい取り方
相見積もりは2〜3社から取るのが適切です。1社では比較できず、5社以上は情報過多で判断が難しくなります。
取る際のポイントは以下の3つです。
1. 同じ条件で依頼する
塗装範囲、希望塗料グレード、工期の希望を同じ条件で伝えてください。条件がバラバラだと、価格差の理由が分からなくなります。
2. 工程ごとの人工を確認する
「各工程に何人工かかりますか?」と質問してください。特に下地処理の人工は必ず確認しましょう。
3. 価格差の理由を聞く
見積もりが出揃ったら、価格差の理由を各社に確認します。「なぜ他社より高い(安い)のか」を説明できる業者は、自社の見積もりに自信を持っています。
まとめ:「人工」で比較すれば業者の本気度が分かる
相見積もりで見るべきは「総額」ではなく「人工」です。
特に下地処理にどれだけ時間をかけるかで、その業者の品質に対する姿勢が分かります。グレーゾーンと呼ばれる見えない部分にこそ、手を抜かない業者を選んでください。
「各工程に何人工かけますか?」——この質問一つで、業者選びの精度は大きく変わります。
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