「夏は乾燥が早いから塗装に向いている」
これは半分正解で、半分間違い。
確かに夏は塗料の乾燥が早い。しかし、乾燥が早いからこそ、職人が急ぎやすい。そして急いだ結果、品質が犠牲になる。
外壁塗装の品質公式を思い出してほしい:
品質 = 職人のやる気 × 技術と塗料の種類 × 作業にかけられる時間
夏場は「乾燥が早い」という理由で、作業時間が短縮されやすい。その結果、塗膜の耐久性が落ちることがある。
この記事では、夏の塗装工事で何が起きやすいのか、そして見積もり段階でどう確認すればよいかを解説する。
夏の塗装で起きやすい問題
問題1:1日で無理な塗り重ねをする
夏は気温が高く、塗料の乾燥が早い。これを「メリット」と捉える職人は、1日のうちに複数の工程を詰め込もうとする。
・午前中に下塗り
・昼過ぎに中塗り
・夕方に上塗り
「どうせすぐ乾くから」と、本来別の日に行うべき工程を1日で済ませてしまう。
問題2:表面だけ乾いて内部は未硬化
夏場、特に直射日光が当たる面では、表面だけが急速に乾く。しかし塗膜の内部はまだ硬化していない。
この状態で塗り重ねると、内部の溶剤が閉じ込められ、後から膨れや剥離が発生する。これを「リフティング」と呼ぶ。
問題3:「指触乾燥」と「塗り重ね乾燥」を混同する
指触乾燥:表面を指で触っても付かない状態(夏場30分〜1時間) 塗り重ね乾燥:次の塗装ができる状態・内部まで硬化(夏場3〜6時間以上) 指触乾燥 ≠ 塗り重ねOK
表面が乾いているように見えても、塗り重ねには早すぎることがある。塗料メーカーは「塗り重ね乾燥時間」を指定しているが、これを無視する職人が少なくない。
「塗料メーカーの指示通りに乾燥時間を確保することが重要だと述べています」
なぜ職人は急いでしまうのか
理由1:「乾いたから大丈夫」という誤解
指で触って乾いていれば塗り重ねOKと思い込んでいる。指触乾燥と塗り重ね乾燥の違いを知らない、または軽視している。
理由2:夏の暑さから早く逃れたい
夏の屋根の上は50℃を超えることもある。体力的にきつく、早く作業を終わらせたいという心理が働く。
理由3:工期短縮のプレッシャー
下請け構造では工期が厳しく設定されることが多い。「夏だから早く終わるだろう」と短い工期を押し付けられ、無理な塗り重ねをせざるを得ないケースもある。
理由4:足場レンタル費用の削減
足場がレンタルの場合、日数が増えればコストも増える。「どうせ乾くなら1日でやってしまおう」という判断が働きやすい。
リフティングとは何か
リフティングの仕組み
これが「リフティング」。塗膜が波打ったり、縮んだりする現象。
リフティングが起きると
・塗膜の密着不良
・見た目が悪い(波打ち、しわ)
・耐久性の低下
・最悪の場合、剥離
リフティングを防ぐには
塗り重ね乾燥時間を守る。これに尽きる。
夏場でも、塗料メーカーが指定する塗り重ね乾燥時間を守れば、リフティングは防げる。
夏場の塗装工事で確認すべきポイント
質問1:「夏場でも塗り重ね乾燥時間は守りますか?」
この質問への反応で、業者の品質意識がわかる。
「はい、最低3時間以上あけます」 「塗料メーカーの指定に従います」
「夏は乾くから大丈夫」 「経験でわかります」 「指で触って確認します」
質問2:「1日に何回塗りますか?」
理想は「1日1工程」。下塗り・中塗り・上塗りをそれぞれ別の日に行う。
「基本的に1日1工程です」 「乾燥時間を十分に取ります」
「夏なら1日で2回塗れます」 「午前と午後で分けます」
質問3:「乾燥時間の記録を取っていますか?」
品質管理意識の高い業者は、施工記録を残している。
・各工程の塗装開始・終了時刻
・気温・湿度
・塗り重ね間隔
「塗り重ね乾燥時間を守ったかどうか、記録を出してもらえますか?」と依頼する。 出してくれる業者 → 品質管理ができている 出せない・渋る業者 → 管理が曖昧
質問4:「直射日光が当たる面はどう対応しますか?」
南面や西面は直射日光で表面温度が非常に高くなる。
「日陰になる時間帯に塗ります」 「養生で日光を遮ります」
「特に変えません」 「乾きやすいから問題ない」
夏の塗装工事 ― 工期の目安
夏だからといって、工期が極端に短くなるわけではない。
総工期:最低ライン 10〜12日 / 丁寧な施工 14〜18日 塗り重ね間隔:最低ライン 3時間以上 / 丁寧な施工 半日〜1日
「夏だから1週間で終わります」という業者は、乾燥時間を無視している可能性が高い。
見積書でのチェックポイント
見積書に以下が明記されているか確認:
まとめ
夏は塗料の乾燥が早いが、だからこそ注意が必要。
・1日で無理な塗り重ねをする ・表面だけ乾いて内部は未硬化 ・「指触乾燥」と「塗り重ね乾燥」を混同
表面が乾いていても、塗り重ねには早すぎることがある。
「塗り重ね乾燥時間を守った記録を出してください」と依頼することで、業者の品質管理意識がわかる。
「夏に塗装工事を予定しているけど、ちゃんと乾燥時間を守ってもらえるか不安」
「見積もりの工期が短すぎる気がする」
「複数社の見積もりを比較して、工程管理がしっかりしているか確認したい」
そんな方のために、建設マネジメントの専門家による見積もり診断サービスを提供しています。
工期設定や塗り重ね乾燥時間の管理が適切かどうか、第三者の目でチェックします。
また、工事伴走コーチングでは、施工中の記録確認や品質チェックもサポート。夏場の塗装工事を安心して進められます。
見積書は「人工」で比較しよう
外壁塗装の見積書、金額だけで比較していませんか?
同じ金額でも、かける人手(人工)は業者によって3倍以上違います。
- 高圧洗浄:2時間 vs 1日
- コーキング撤去:省略 vs 2〜3日
- 下地処理:数時間 vs 2日
見積書、このままで大丈夫?
50年の現場経験を持つ診断アドバイザーが、あなたの見積書をチェックします。 適正価格か、工程に問題はないか、第三者の目で確認してみませんか?
無料で相談する※ 営業目的の連絡は一切いたしません