はじめに
外壁塗装の品質を見極める最も確実な方法は、「人工(にんく)」で比較することです。
しかし、もっと根本的な問いがあります。
「そもそも、その会社は十分な人工をかけられる構造を持っているのか?」
「人工」とは何か
「人工(にんく)」とは、1人の職人が1日働く量を表す建設業界の単位です。
- 1人工 = 1人 × 1日
- 2人工 = 2人 × 1日 = 1人 × 2日
外壁塗装の品質は、どれだけの人工をかけたかで決まります。
同じ金額でも、人工は3倍違う
ここで重要な事実があります。
同じ100万円の工事でも、職人が使える予算は会社によって3倍以上違います。
その差を生むのが、「中間マージン」と「経営体質」です。
お金の流れで見る「人工の差」
ケース1:ポータルサイト経由で大手に依頼
施主の支払い100万円の場合を見てみましょう。
ポータルサイト紹介料として10万円(10%)が引かれます。
元請け会社マージンとして30万円(30%)が引かれます。
下請け施工店マージンとして25万円が引かれます。
実際の職人への予算は35万円です。
かけられる人工は約15人工(35万円÷2.3万円/人工)となります。
ケース2:地域密着・自社施工の業者に直接依頼
施主の支払い100万円の場合を見てみましょう。
自社HPからの問い合わせで紹介料はかかりません。
自社職人が直接施工します。
足場も自社保有です。
実際の職人への予算は75万円です。
かけられる人工は約32人工(75万円÷2.3万円/人工)となります。
同じ100万円で、人工が2倍以上違う。これが品質の差になります。
「人工を生み出せる会社」の条件
では、どんな会社が「人工を生み出せる」のでしょうか。
自社で集客している(HPを自社運用)
広告代理店やポータルサイトに頼ると、成約1件あたり数万円〜数十万円の手数料がかかります。
自社HPで集客できる会社は、その予算を施工に回せます。
元請け(直接契約)で施工している
ハウスメーカーや大手リフォーム会社の下請けだと、30〜50%のマージンを抜かれます。
直接契約なら、その分が職人への報酬になります。
足場を自社保有している
足場のレンタル費用は15〜20万円程度。これを自社保有していれば、その予算を施工に使えます。
さらに、レンタル期間を気にせず、工期に余裕を持てます。
足場は一度購入すれば使い回しが効きます。自社保有している=長期的視点で経営している証拠です。
多能工化している(防水・板金も対応)
コーキング、防水、板金を外注すると、その都度マージンが発生します。
自社で完結できる会社は、外注費を職人の人工に回せます。
地域密着で施工している
遠方から来る職人は、移動時間がかかる分、現場作業が圧迫されます。
近隣の業者なら、移動時間を施工に使えます。また、急な天候変化にも柔軟に対応できます。
構造の違いが生む「1日の過ごし方」の差
遠方から来る下請け職人の1日
6:00に起床・準備をします。
7:00に現場へ移動を開始し、1時間半かかります。
8:30に現場に到着し、準備を始めます。
9:00に作業を開始します。
12:00に昼休憩です。
13:00に作業を再開します。
16:00に片付けを開始します(帰宅時間に追われるため)。
16:30に現場を出発します。
18:00に帰宅します。
実作業時間は約6時間です。
地域密着・自社施工の職人の1日
7:30に起床・準備をします。
8:00に現場へ移動を開始し、15分で到着します。
8:15に現場に到着し、準備を始めます。
8:30に作業を開始します。
12:00に昼休憩です。
13:00に作業を再開します。
17:30に片付けをします。
18:00に現場を出発し帰宅します。
実作業時間は約8時間です。
1日あたり2時間の差。10日間の工事なら20時間の差。これが品質の差になります。
工程別の適正人工(30坪住宅の目安)
各工程について、急ぎの業者と丁寧な業者の違いを見てみましょう。
足場設置:急ぎの業者も丁寧な業者も1日です。
高圧洗浄:急ぎの業者は2〜3時間、丁寧な業者は1日。差が出やすい工程です。
乾燥:急ぎの業者は翌日から作業開始、丁寧な業者は1日以上確保します。
コーキング撤去:急ぎの業者は省略〜半日、丁寧な業者は2〜3日。最も差が出る工程です。
コーキング充填:急ぎの業者は半日、丁寧な業者は1〜2日です。
下地処理:急ぎの業者は数時間、丁寧な業者は1〜2日。差が出やすい工程です。
下塗り:急ぎの業者は半日、丁寧な業者は1日です。
中塗り:急ぎの業者も丁寧な業者も1日です。
乾燥:急ぎの業者は数時間、丁寧な業者は1日です。
上塗り:急ぎの業者も丁寧な業者も1日です。
乾燥・点検:急ぎの業者はなし、丁寧な業者は1日です。
足場解体:急ぎの業者も丁寧な業者も1日です。
総工期:急ぎの業者は5〜7日、丁寧な業者は12〜18日です。
見積もり時に聞くべき5つの質問
質問1:自社施工ですか?下請けですか?
下請けに出す会社は、中間マージンを抜いています。
質問2:足場は自社保有ですか?
自社保有なら、経営体質が良い証拠。工期にも余裕を持てます。
質問3:各工程に何日かかりますか?
特に「高圧洗浄」「コーキング撤去」「下地処理」の日数を確認してください。
質問4:御社から現場までの距離は?
30分以内の地域密着業者がベストです。
質問5:ホームページはありますか?
自社HPで集客している=広告費を施工に回せます。
まとめ:構造を見れば品質がわかる
外壁塗装の品質は、会社の構造で決まります。
「人工を生み出せる会社」を選ぶことが、高品質な施工への最短ルートです。
人工を生み出せる会社のチェックリスト
- 自社施工(下請けに出さない)
- 足場を自社保有
- 自社HPで集客
- 地域密着(30分以内)
- 多能工化(防水・板金も対応)
工程別の詳細記事
各工程の詳しいチェックポイントは、以下の記事で解説しています。
見積書の確認ポイント
業者を見極める
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