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外壁塗装の品質は「人工」で決まる|人工を生み出せる会社の見分け方

外壁塗装の品質は「人工(にんく)」で決まる。同じ100万円でも、中間マージンと経営体質で職人が使える予算は3倍違います。「人工を生み出せる会社」の条件と見分け方を50年の経験から解説。

はじめに

外壁塗装の品質を見極める最も確実な方法は、「人工(にんく)」で比較することです。

しかし、もっと根本的な問いがあります。

「そもそも、その会社は十分な人工をかけられる構造を持っているのか?」

「人工」とは何か

「人工(にんく)」とは、1人の職人が1日働く量を表す建設業界の単位です。

  • 1人工 = 1人 × 1日
  • 2人工 = 2人 × 1日 = 1人 × 2日

外壁塗装の品質は、どれだけの人工をかけたかで決まります。

同じ金額でも、人工は3倍違う

ここで重要な事実があります。

同じ100万円の工事でも、職人が使える予算は会社によって3倍以上違います。

その差を生むのが、「中間マージン」と「経営体質」です。

お金の流れで見る「人工の差」

ケース1:ポータルサイト経由で大手に依頼

施主の支払い100万円の場合を見てみましょう。

ポータルサイト紹介料として10万円(10%)が引かれます。

元請け会社マージンとして30万円(30%)が引かれます。

下請け施工店マージンとして25万円が引かれます。

実際の職人への予算は35万円です。

かけられる人工は約15人工(35万円÷2.3万円/人工)となります。

ケース2:地域密着・自社施工の業者に直接依頼

施主の支払い100万円の場合を見てみましょう。

自社HPからの問い合わせで紹介料はかかりません。

自社職人が直接施工します。

足場も自社保有です。

実際の職人への予算は75万円です。

かけられる人工は約32人工(75万円÷2.3万円/人工)となります。

同じ100万円で、人工が2倍以上違う。これが品質の差になります。

「人工を生み出せる会社」の条件

では、どんな会社が「人工を生み出せる」のでしょうか。

自社で集客している(HPを自社運用)

広告代理店やポータルサイトに頼ると、成約1件あたり数万円〜数十万円の手数料がかかります。

自社HPで集客できる会社は、その予算を施工に回せます。

元請け(直接契約)で施工している

ハウスメーカーや大手リフォーム会社の下請けだと、30〜50%のマージンを抜かれます。

直接契約なら、その分が職人への報酬になります。

足場を自社保有している

足場のレンタル費用は15〜20万円程度。これを自社保有していれば、その予算を施工に使えます。

さらに、レンタル期間を気にせず、工期に余裕を持てます。

足場は一度購入すれば使い回しが効きます。自社保有している=長期的視点で経営している証拠です。

多能工化している(防水・板金も対応)

コーキング、防水、板金を外注すると、その都度マージンが発生します。

自社で完結できる会社は、外注費を職人の人工に回せます。

地域密着で施工している

遠方から来る職人は、移動時間がかかる分、現場作業が圧迫されます。

近隣の業者なら、移動時間を施工に使えます。また、急な天候変化にも柔軟に対応できます。

構造の違いが生む「1日の過ごし方」の差

遠方から来る下請け職人の1日

6:00に起床・準備をします。

7:00に現場へ移動を開始し、1時間半かかります。

8:30に現場に到着し、準備を始めます。

9:00に作業を開始します。

12:00に昼休憩です。

13:00に作業を再開します。

16:00に片付けを開始します(帰宅時間に追われるため)。

16:30に現場を出発します。

18:00に帰宅します。

実作業時間は約6時間です。

地域密着・自社施工の職人の1日

7:30に起床・準備をします。

8:00に現場へ移動を開始し、15分で到着します。

8:15に現場に到着し、準備を始めます。

8:30に作業を開始します。

12:00に昼休憩です。

13:00に作業を再開します。

17:30に片付けをします。

18:00に現場を出発し帰宅します。

実作業時間は約8時間です。

1日あたり2時間の差。10日間の工事なら20時間の差。これが品質の差になります。

工程別の適正人工(30坪住宅の目安)

各工程について、急ぎの業者と丁寧な業者の違いを見てみましょう。

足場設置:急ぎの業者も丁寧な業者も1日です。

高圧洗浄:急ぎの業者は2〜3時間、丁寧な業者は1日。差が出やすい工程です。

乾燥:急ぎの業者は翌日から作業開始、丁寧な業者は1日以上確保します。

コーキング撤去:急ぎの業者は省略〜半日、丁寧な業者は2〜3日。最も差が出る工程です。

コーキング充填:急ぎの業者は半日、丁寧な業者は1〜2日です。

下地処理:急ぎの業者は数時間、丁寧な業者は1〜2日。差が出やすい工程です。

下塗り:急ぎの業者は半日、丁寧な業者は1日です。

中塗り:急ぎの業者も丁寧な業者も1日です。

乾燥:急ぎの業者は数時間、丁寧な業者は1日です。

上塗り:急ぎの業者も丁寧な業者も1日です。

乾燥・点検:急ぎの業者はなし、丁寧な業者は1日です。

足場解体:急ぎの業者も丁寧な業者も1日です。

総工期:急ぎの業者は5〜7日、丁寧な業者は12〜18日です。

見積もり時に聞くべき5つの質問

質問1:自社施工ですか?下請けですか?

下請けに出す会社は、中間マージンを抜いています。

質問2:足場は自社保有ですか?

自社保有なら、経営体質が良い証拠。工期にも余裕を持てます。

質問3:各工程に何日かかりますか?

特に「高圧洗浄」「コーキング撤去」「下地処理」の日数を確認してください。

質問4:御社から現場までの距離は?

30分以内の地域密着業者がベストです。

質問5:ホームページはありますか?

自社HPで集客している=広告費を施工に回せます。

まとめ:構造を見れば品質がわかる

外壁塗装の品質は、会社の構造で決まります。

「人工を生み出せる会社」を選ぶことが、高品質な施工への最短ルートです。

人工を生み出せる会社のチェックリスト

  • 自社施工(下請けに出さない)
  • 足場を自社保有
  • 自社HPで集客
  • 地域密着(30分以内)
  • 多能工化(防水・板金も対応)

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工程別の詳細記事

各工程の詳しいチェックポイントは、以下の記事で解説しています。

見積書の確認ポイント

スレート屋根塗装:タスペーサーの確認方法

コーキング工事:打ち替えと増し打ちの違い

2液型塗料:計量方法の確認

工期全体:適正工期の目安

下地処理:品質確認のコツ

業者を見極める

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