外壁塗装の見積もりを取ると、「外壁」「屋根」「付帯部」などの項目が並ぶ。しかし、雨漏りリスクが高い箇所が見積もりに含まれていないことがある。
その代表例が「谷樋(たにどい)」。
谷樋は屋根の谷部分に設置される樋で、雨水が集中するため劣化しやすく、雨漏りの原因になりやすい。にもかかわらず、見積もりで言及されないことが多い。
「雨が漏れるといっても、すべての箇所から平均的に雨が漏れるわけではありません。雨が漏れる部位と漏れない部位があるのです」
この記事では、谷樋をはじめとする「見落とされやすい雨漏りリスク箇所」と、見積もり段階での確認方法を解説する。
谷樋(たにどい)とは何か
谷樋の役割
屋根には「山」と「谷」がある。L字型やT字型の屋根、複雑な形状の屋根には、必ず谷の部分ができる。
谷樋は、この谷部分に設置される樋(とい)のこと。屋根の両側から流れてきた雨水が集中するため、雨水の流量が最も多い箇所になる。
谷樋の素材
ガルバリウム鋼板:耐久性が高い。近年の主流
銅板:長寿命だが高価。緑青(ろくしょう)で穴が開くことも
ステンレス:耐久性が高いがコスト高
塩ビ製:安価だが紫外線に弱い
なぜ谷樋から雨漏りするのか
理由1:雨水が集中する
屋根の谷部分は、両側の屋根面から雨水が流れ込む。強い雨の時は大量の水が集中し、排水が追いつかないと溢れて雨漏りの原因になる。
理由2:ゴミが溜まりやすい
落ち葉や砂埃が谷部分に溜まりやすい。ゴミが詰まると水が流れなくなり、滞留した水が建物内部に浸入する。
理由3:劣化しやすい
・常に水が流れるため、腐食が進みやすい
・金属製の場合、塗膜が剥がれると錆びる
・接合部のシーリングが劣化すると隙間ができる
理由4:目視しにくい
谷樋は屋根の谷間にあるため、下からは見えない。足場を組んで上から見ないと、劣化状況がわからない。だから見積もり段階で見落とされやすい。
谷樋の処理 ― 塗装か、交換か
塗装で対応できるケース
・表面の錆が軽微
・穴や亀裂がない
・接合部のシーリングが健全
この場合は、ケレン(錆落とし)→錆止め塗装→上塗りで対応可能。
交換が必要なケース
・穴が開いている
・大きな亀裂がある
・全体的に腐食が進んでいる
・銅板で緑青による穴がある
塗装はあくまで表面の保護。穴や亀裂がある場合、塗装しても雨漏りは止まらない。状態によっては板金工事(交換)が必要。
見積もりで確認すべきポイント
質問1:「谷樋の状態は確認されましたか?」
見積もり前の現地調査で、谷樋を確認したかどうか聞く。
「はい、確認しました。〇〇の状態でした」 「写真を撮ってあります」
「谷樋?」 「屋根には上がっていません」 「見積もりには含まれていません」
谷樋を確認していない業者は、見えない箇所を見ていない可能性が高い。
質問2:「谷樋は見積もりに含まれていますか?」
見積書に「谷樋」の項目があるか確認。
含まれている場合:処理方法(塗装 or 交換)と費用を確認
含まれていない場合:なぜ含まれていないのか理由を確認
「問題なかったので含めていません」なら納得できる。「見ていません」なら要注意。
質問3:「谷樋の状態が悪かった場合、どう対応しますか?」
足場を組んでから状態が悪いことが判明するケースもある。その場合の対応方針を確認。
「写真を撮って報告し、追加工事の見積もりを出します」 「事前に想定費用をお伝えします」
「その時に考えます」 「追加費用がかかります」(金額不明)
谷樋以外の「見落とされやすい雨漏りリスク箇所」
谷樋だけでなく、以下の箇所も見積もりで見落とされやすい。
1. 天窓(トップライト)
「トップライトは雨漏りにつながりやすく、業者でも対応を嫌がる場合が多いものです」
天窓周りは構造が複雑で、シーリングの劣化や板金の不具合で雨漏りしやすい。見積もりに天窓周りの処理が含まれているか確認。
2. パラペット(屋上の立ち上がり部分)
フラットルーフ(陸屋根)の周囲にある立ち上がり部分。雨水が溜まりやすく、防水層の劣化で雨漏りする。
「フラットルーフは、下からはどうなっているのか見えにくいので、お住まいの状況変化に気づきにくい屋根です」
3. 軒天と外壁の取り合い部
軒天(のきてん)と外壁の接合部は、雨水が入り込みやすい。シーリングの劣化や塗膜の剥がれがあると雨漏りリスクが高まる。
4. 換気扇・配管の貫通部
外壁を貫通している換気扇や配管周りは、シーリングの劣化で雨水が浸入しやすい。
5. バルコニー・ベランダの防水層
バルコニーの床面は防水層で覆われているが、経年劣化でひび割れが発生する。外壁塗装と同時に防水工事が必要なケースも多い。
雨漏りが起きるとどうなるか
雨漏りを放置すると、以下の二次被害が発生する:
1. 木材の腐朽
雨水が染み込んだ木材は腐る。構造材が腐ると建物の強度が低下する。
2. シロアリ被害
「雨漏りはさらに、シロアリ被害という二次災害をもたらします」
湿った木材はシロアリの格好の餌食。雨漏りを放置すると、知らないうちにシロアリ被害が進行していることがある。
3. カビ・ダニの発生
壁内や天井裏に湿気がこもると、カビやダニが発生。健康被害やアレルギーの原因になる。
4. 修繕費用の増大
早期発見なら谷樋の交換(数万円〜十数万円)で済む。放置すると屋根全体の葺き替え、構造材の補修(数十万〜数百万円)が必要になることも。
見積もり時に「見えない箇所」を確認する方法
方法1:現地調査で屋根に上がったか確認
「現地調査で屋根には上がりましたか?」と聞く。上がっていない場合、谷樋や天窓など屋根上の状態は確認されていない。
方法2:調査時の写真を見せてもらう
「調査時に撮った写真を見せてもらえますか?」と依頼。谷樋や天窓周りの写真があるか確認。
方法3:見積もりの「別途」「含まず」に注意
見積書に「別途」「含まず」と書かれている項目がないか確認。谷樋やトップライトが「別途」になっていたら、追加費用の可能性がある。
方法4:雨漏り経験の有無を伝える
過去に雨漏りがあった場合は、必ず業者に伝える。どこから漏れたか、いつ頃かを伝えると、重点的に確認してもらえる。
まとめ
谷樋は雨水が集中し、雨漏りリスクが高い箇所。しかし、見積もりで見落とされやすい。
雨漏りは放置するとシロアリ被害や構造材の腐朽につながる。見積もり段階で「見えない箇所」まで確認してくれる業者を選ぶことが重要。
「見積もりに谷樋が含まれているか確認したい」
「雨漏りリスクがある箇所をちゃんと見てもらえているか不安」
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谷樋や天窓など「見落とされやすい箇所」が見積もりに含まれているか、第三者の目でチェックします。
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