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木部塗装の落とし穴|"外壁と同じ塗料"で塗られていませんか?

木部塗装の見積もりで「靱性塗料」が使われているかどうかは、塗装の寿命を大きく左右します。木部特有の伸縮に対応できる塗料選びのポイントを解説します。

外壁塗装の見積もりを見て、こんな疑問を持ったことはないだろうか。

「破風板や軒天も、外壁と同じ塗料で塗るんですか?」

この質問に対して、業者がどう答えるかで品質意識がわかる。

木は「動く」素材。気温や湿度で伸縮する。だから、外壁用の硬い塗料をそのまま塗ると、木の動きに追従できず、早期にひび割れや剥離が発生する

ところが、多くの見積書では木部の塗料が明記されていない。または「外壁と同じシリコン塗料」と一括りにされている。

さらに問題なのは、劣化が激しい木部への対処法。ボロボロの木材の上にいきなり塗膜を作っても、下地ごと剥がれてしまう。

この記事では、木部塗装の特性と、見積もり段階で確認すべきポイントを解説する。

住宅のどこに「動く部材」があるか

外壁塗装で注意が必要な「動く部材」を整理する。

木部

破風板:屋根の端(三角部分)。雨風・紫外線を直接受ける

鼻隠し:軒先の板。雨樋が取り付けられる

軒天(のきてん):軒の裏側。湿気がこもりやすい

窓枠・ドア枠:開口部周り。動きが多い部分

ウッドデッキ:庭・バルコニー。直接雨に当たる

板塀・木製フェンス:外構。地面からの湿気を受ける

雨樋(塩ビ)も要注意

意外と見落とされがちだが、雨樋(塩ビ製)も「動く」部材

・夏の直射日光で高温になり、膨張する

・冬は収縮する

・長い軒樋ほど、伸縮の幅が大きい

雨樋に硬い塗料を塗ると、木部と同様にひび割れや剥離が起きやすい。雨樋も柔軟性のある塗料が必要。

木部塗装が難しい3つの理由

理由1:木は「動く」

木材は生きた素材。気温・湿度の変化で伸縮する。

・夏(高湿度):膨張する

・冬(乾燥):収縮する

この動きは年間を通じて繰り返される。外壁材(サイディングやモルタル)と比べて、動きの幅が大きい

理由2:木は「呼吸」する

木材は内部に水分を含み、外に放出する。塗膜で完全に覆ってしまうと、内部の水分が逃げ場を失い、塗膜の膨れや剥離につながる。

理由3:木は「劣化しやすい」

木材は紫外線と水分に弱い。特に南面や西面の木部は、直射日光で急速に劣化する。塗り替え周期も外壁より短く、3〜5年ごとのメンテナンスが必要な場合もある。

外壁用塗料を木部に塗るとどうなるか

外壁用の塗料(シリコン、フッ素など)は、硬くて耐候性が高い。これが外壁には長所だが、木部には短所になる。

1. ひび割れ:木が伸縮しても、硬い塗膜は追従できない。塗膜にひび割れが入る。 2. 剥離:ひび割れから水が浸入し、木と塗膜の間に入り込む。塗膜が浮いて剥がれる。 3. 腐朽の加速:剥離した部分から水が入り続け、木材自体が腐る。

要するに:外壁用塗料を木部に塗ると、2〜3年で塗り直しが必要になることがある。

木部に適した塗料とは

木部には、木の特性に合った塗料を使う必要がある。大きく分けて2種類ある。

タイプ1:浸透型塗料(ステイン系)

・木材の内部に浸透する

・塗膜を作らない

・木の「呼吸」を妨げない

・木目が見える(意匠性を活かせる)

・耐久性は低め(2〜3年で塗り直し)

劣化した木材を「固める」効果がある

ウッドデッキ、木製フェンス、意匠を活かしたい木部、劣化が激しい木部の下地処理

タイプ2:造膜型塗料(靱性塗料)

・木材の表面に塗膜を作る

靱性(じんせい)=柔軟性・弾性がある

・木の伸縮に追従できる

・耐久性が高い(5〜8年)

・木目は隠れる

破風板、鼻隠し、軒天、窓枠

「靱性塗料」とは

靱性(じんせい)とは、材料が割れにくく、変形に耐える性質のこと。

木部用の靱性塗料は、硬すぎず柔らかすぎず、木の動きに追従できる柔軟性を持っている。

一般的な外壁用シリコン塗料は「硬い」。靱性塗料は「しなやか」。この違いが木部の耐久性を大きく左右する。

劣化が激しい木部への正しい対処法

ここが多くの業者が間違えるポイント

よくある失敗:ボロボロの木にいきなり造膜

劣化が激しい木部に、いきなり造膜型塗料を塗る業者がいる。

1. 木材の表面がボロボロ(繊維が立っている、スカスカになっている) 2. その上に塗膜を作る 3. 塗膜は木材の表面にしか密着していない 4. ボロボロの表面ごと、塗膜が剥がれる 躯体がボロボロの上に造膜しても、一緒に剥がれてしまう。

正しい手順:浸透系で固めてから造膜

劣化が激しい木部の正しい対処法:

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この「浸透→造膜」の順序を守らないと、どんな良い塗料を使っても剥がれる。

見積書でのチェックポイント

チェック1:木部が別項目になっているか

見積書で「外壁塗装 一式」とまとめられていたら要注意。

外壁塗装(サイディング):○○塗料 木部塗装(破風・鼻隠し):△△塗料 軒天塗装:□□塗料 雨樋塗装:◇◇塗料

外壁塗装一式:○○塗料 ※木部・雨樋含む

木部・雨樋が別項目になっていれば、業者が「動く部材」の特性を理解している可能性が高い。

チェック2:木部専用塗料の名前が明記されているか

具体的な塗料名を確認する。

確認すべき点:メーカー名と商品名、木部専用塗料かどうか、浸透型か造膜型か

「外壁と同じ塗料」と書かれていたら、なぜ木部に適しているのか説明を求める。

チェック3:木部の下地処理が含まれているか

木部は外壁以上に下地処理が重要。

確認すべき項目:ケレン(旧塗膜の除去、目荒らし)、木部用シーラー・プライマー、腐朽部分の補修、劣化がひどい場合:浸透系での固め作業

「ケレン」が見積書に含まれていなければ、確認が必要。

チェック4:劣化がひどい場合の対応が書かれているか

確認すべき点:「木部の状態により追加処理が必要な場合があります」などの記載、浸透系塗料での下地処理の有無、交換・板金カバーの選択肢の提示

見積もり時に業者に聞くべき質問

質問1:「木部には何の塗料を使いますか?」

「○○メーカーの△△という木部専用塗料を使います」

「外壁と同じシリコンで大丈夫です」

質問2:「外壁用塗料と木部用塗料は何が違いますか?」

「木は動くので、柔軟性のある塗料を使います」 「靱性塗料を使います」

「特に変わりません」 「どちらでも持ちます」

質問3:「木部の劣化がひどかった場合、どう対応しますか?」

ボロボロの木材にいきなり造膜する業者は、早期剥離のリスクが高い。

「浸透系の塗料で固めてから、上塗りします」 「状態によっては交換を提案します」

「塗れば大丈夫です」 「上から塗って隠します」

質問4:「雨樋の塗装はどうしますか?」

「雨樋も伸縮するので、柔軟性のある塗料を使います」

「外壁と同じで大丈夫です」 「雨樋は塗らなくていいです」

質問5:「木部の塗り替え周期はどのくらいですか?」

「外壁より短く、5年程度を目安に点検をおすすめします」

「外壁と同じ10年は持ちます」

木部が外壁と同じ耐用年数というのは、現実的ではない。正直に説明してくれる業者は信頼できる。

木部の劣化サインと対応の目安

色褪せ・チョーキング(塗膜の劣化)→ 塗り替えで対応可能

ひび割れ(塗膜のみ)(塗膜が追従できていない)→ ケレン後に塗り替え

剥離(塗膜が浮いている)→ ケレン後に塗り替え

木材表面のケバ立ち(木材自体が劣化し始め)→ 浸透系で固めてから塗装

木材のひび割れ(木材自体が傷んでいる)→ 浸透系で固めてから塗装、または補修

腐朽(押すと柔らかい)(木材が腐っている)→ 交換または板金カバー

表面がケバ立っている、触るとボロボロする、という状態なら、いきなり造膜してはダメ。浸透系で固めてから造膜する。

板金カバーという選択肢

破風板・鼻隠しの劣化が進んでいる場合、塗装ではなく板金(ガルバリウム鋼板)でカバーする方法もある。

・木部の塗り替えが不要になる ・長期的にはコストメリットがある場合も ・腐朽が進んでいても対応できる

・初期費用が塗装より高い ・意匠が変わる

見積もり段階で「塗装と板金カバー、どちらがおすすめですか?」と聞いてみるのも良い。状態を見て適切な提案をしてくれる業者は信頼できる。

まとめ

木部塗装のポイントを整理する。

・木部(破風、軒天、窓枠など) ・雨樋(塩ビ製)

・木は「動く」(伸縮する) ・木は「呼吸」する(水分を放出) ・木は「劣化しやすい」(紫外線・水分に弱い)

・硬い塗膜が木の動きに追従できない ・早期にひび割れ・剥離が発生 ・2〜3年で塗り直しが必要になることも

・浸透型(ステイン系):木目を活かしたい場所、劣化した木部の下地固め ・造膜型(靱性塗料):破風・軒天など耐久性が必要な場所

1. 浸透系塗料で木材を固める 2. 下地を整える 3. 造膜型塗料で仕上げる 躯体がボロボロの上にいきなり造膜 → 一緒に剥がれる

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「見積書に木部の塗料が書いていない」

「外壁と同じ塗料で大丈夫と言われたけど、本当?」

「破風板がかなり傷んでいるけど、塗装で対応できる?」

「雨樋も塗ってもらえるのか確認したい」

外壁塗装の見積もりでは、木部の扱いが業者の品質意識を見極めるポイントになる。

木部に適した塗料が選ばれているか、劣化した木部への対処法が正しいか、第三者の目でチェックする見積もり診断サービスをご利用ください。

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