この記事でわかること
- 見積もり時に聞くべき10の質問
- 各質問の意図と、回答の見方
- 優良業者と要注意業者の違い
診断アドバイザーとして、数多くの見積もり評価を行ってきた経験から、職人を見極めるための質問をまとめました。
なぜ「質問」が重要なのか
塗装工事は、塗ってしまえば素人には品質がわかりません。
だからこそ、契約前に「この会社は丁寧な仕事ができる体制を持っているか」を見極める必要があります。
以下の質問は、「丁寧な施工ができる構造を持った会社かどうか」を判断するためのものです。
【質問1】この見積もりは御社が直接施工しますか?
目的:中間マージンの有無を確認
下請けに出す会社は、中間マージンを抜いています。その分、現場にかけられる人工(にんく)が減ります。
良い回答:
- 「自社の職人が施工します」
注意が必要な回答:
- 「協力会社と一緒に」→ 確認が必要
- 「施工は別の会社が」→ 中間マージンが発生
【質問2】足場は自社でお持ちですか?
目的:経営体質と工期の余裕を確認
足場を自社保有している会社は、レンタル費用がかからないため、工期に余裕を持てます。
また、足場への設備投資ができる=経営が安定している証拠です。
良い回答:
- 「自社で持っています」
注意が必要な回答:
- 「レンタルです」→ レンタル期間に追われる可能性
【質問3】御社から現場までどれくらいの距離ですか?
目的:地域密着度を確認
遠方から来る職人は、移動時間がかかる分、現場作業を急ぎがちです。
また、雨天時の柔軟な対応も難しくなります。
良い回答:
- 30分以内 → 地域密着で安心
- 1時間以内 → 許容範囲
注意が必要な回答:
- 1時間以上 → 移動時間が作業を圧迫
地域密着の業者は「ご近所の目」もあるため、手抜きをしにくい傾向があります。
【質問4】各工程に、何人で何日かかりますか?
目的:人工(作業時間)を具体的に確認
最も重要な質問です。この質問への回答で、施工姿勢がすべてわかります。
30坪住宅の目安:
- 高圧洗浄:急ぎの業者は2〜3時間、丁寧な業者は1日
- コーキング撤去・打ち替え:急ぎの業者は1日、丁寧な業者は3〜5日
- 下地処理:急ぎの業者は数時間、丁寧な業者は1〜2日
- 塗装(3回塗り):急ぎの業者は2〜3日、丁寧な業者は5〜6日
- 総工期:急ぎの業者は5〜7日、丁寧な業者は12〜18日
「1週間で終わります」という業者は、どこかの工程を省略しています。
【質問5】雨の日や気温5度以下の日は、作業をどうされますか?
目的:品質への姿勢を確認
塗料は乾燥条件が厳密に決まっています。不適切な条件で塗装すると、数年で剥がれます。
良い回答:
- 「作業を中止します」→ 品質重視
注意が必要な回答:
- 「様子を見ながら」→ 曖昧で注意
- 「大丈夫です」→ 危険
【質問6】コーキングは打ち替えですか?増し打ちですか?
目的:手抜き工事の有無を確認
古いコーキングの上から塗る「増し打ち」は、数年で剥がれます。完全に撤去して打ち替える必要があります。
良い回答:
- 「すべて打ち替えです」
注意が必要な回答:
- 「状態を見て判断」→ 確認が必要
- 「増し打ちで十分です」→ 手抜き
追加確認:「撤去に何日かかりますか?」
30坪の住宅なら、丁寧な撤去に2〜3日かかるのが普通です。
【質問7】スレート屋根の塗装で、タスペーサーは使いますか?
目的:専門知識を確認
スレート屋根を塗装すると、屋根材の隙間が塗料で埋まり、雨水の排出路がなくなります。
タスペーサーで隙間を確保しないと、雨漏りの原因になります。
良い回答:
- 「もちろん使います」→ 知識あり
- 「縁切りで対応します」→ 手作業だが対応
注意が必要な回答:
- 「必要ありません」→ 知識不足または手抜き
【質問8】2液型塗料を使う場合、計量はどうしていますか?
目的:施工精度を確認
2液型塗料は主剤と硬化剤の配合比率が厳密に決まっています。目分量で混ぜると、硬化不良で塗膜が剥がれます。
良い回答:
- 「電子秤で計量しています」
注意が必要な回答:
- 「経験でわかります」→ 品質が安定しない
【質問9】この工事で、デメリットやリスクはありますか?
目的:誠実さを確認
すべての工事にはリスクがあります。それを正直に説明できる業者は信頼できます。
良い回答の例:
- 「築年数が古いので、高圧洗浄で傷む箇所が出るかもしれません」
- 「この塗料は艶ありなので、数年で艶が落ちてきます」
- 「サイディングの反りがあるので、完全には戻りません」
注意が必要な回答:
- 「特にありません」→ 説明責任を果たしていない
【質問10】保証の内容と条件を教えてください
目的:アフターフォロー体制を確認
保証があっても、条件が厳しすぎると使えません。
確認すべき点:
- 保証期間は何年か
- 保証の対象範囲(剥がれ、変色など)
- 保証が無効になる条件
- 保証書は書面で発行されるか
「10年保証」でも、条件を読むと「自然災害は除く」「経年劣化は除く」で実質使えないケースもあります。
診断アドバイザーとしてのアドバイス
これらの質問をする際のポイントをお伝えします。
1. 複数の業者に同じ質問をする
回答の違いを比較することで、業者の差がわかります。
2. 回答をメモする
後で比較検討するために記録しておきましょう。
3. 曖昧な回答には追加質問する
「様子を見て」「状況による」などの回答には、具体的に聞き返してください。
4. 質問への態度も観察する
質問を嫌がる業者、面倒くさそうにする業者は避けた方が良いでしょう。
丁寧に答えてくれる業者は、施工も丁寧な傾向があります。
まとめ
見積もり時に確認すべき10の質問:
- 自社施工かどうか
- 足場は自社保有か
- 会社から現場までの距離
- 各工程の人数と日数
- 天候不良時の対応
- コーキングは打ち替えか
- タスペーサーの使用
- 2液型塗料の計量方法
- デメリットやリスクの説明
- 保証の内容と条件
私たち診断アドバイザーは、これらの観点から見積もりを評価しています。
ご自身で確認が難しい場合は、セカンドオピニオンとしてご相談ください。
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